
その後、上の娘は無事に就職。
「お父さんが定年退職したら社会保険の扶養頼むね」
「わかったー」
こんな会話も何度か交わしていた。
ところが僕の定年が半年後に迫った頃、めでたく結婚して家を出ていきましたw
娘の結婚は社会保険の扶養などとは比べるべくもなく嬉しいことで、ただただ彼女の幸せを願うばかりなのだが、予定が大きく狂ったのは否めない。
別居の親でも扶養にできないわけではない。しかし毎月の仕送りとその証明が必要になる。そこまでする気にはならない。さて、どうする。
僕が定年を迎えてしばらく後に下の娘が就職するのだが、学卒の新入社員がいきなり親を社会保険の扶養家族にするのはいささか無理がある。1年ずれていれば……と思っても詮がない。さて、どうする。
折しも僕の定年が近づくに連れ、パートの主婦が社会保険に加入する条件が着々と整備されてきていた。僕の家内はもう何年もパートでゆる~く働いていた。
これは完全に僕の見落としだったのだが、僕が満60歳で定年しても、家内は満60歳までまだ1年あまりあり、国民年金の第1号被保険者として年金保険料を支払わなければならないのであった。
もし仮に娘の扶養に入れたところで、家内の国民年金の保険料は支払わなければならない。保険料は月額17,000円以上かかる。もしも家内がパート先で社会保険に加入すれば同じような金額で彼女の厚生年金と健康保険の保険料が賄える上、晴れて僕も彼女の扶養となれる。
家内が勤務を増やして翌年の4月までパート先の社会保険に加入し、その後は勤務を減らして社会人2年目となる下の娘の扶養に入る。どう考えてもこれが最適解だ。
さっそく家内に持ちかけてみた。ところがである。言下に却下された。これ以上は働きたくないとけんもほろろだ。
もう残された手段は僕の会社の社会保険を任意継続する。これしかない。令和4年1月の法改正で任意継続の2年縛りはなくなり、自分の都合でいつでもやめられることになった。年度の切り替わりまでの1年あまりをこれでしのごう。80万円を超える出費だ。金額的にはかなり痛いが仕方ない。
それでも折りに触れて、家内に彼女が社会保険に加入した場合のメリットをプレゼンし続けた。買い物では1,000円でもケチるのに、80万円を超える健康保険料の節約に鈍感なのは、あまりに金額が多すぎて想像が及ばないのだろうか。なかなか首を縦に振らなかった。
しかし「至誠天に通ず」だ。いよいよ定年が目前に迫った頃、やっと彼女が社会保険の加入に同意してくれた。彼女の勤務先も柔軟に対応してくれ、社会保険加入の最低要件である「週20時間」の勤務をクリアするように調整してくれた。最後までドタバタしたが、うまく収まるところに収まった。やれやれである。
社会保険に加入しなくていいようにギリギリで調整する話はよく耳にするが、我が家の場合は逆。最低の勤務時間で社会保険に加入できるようにギリギリで調整したわけだ。1年間だけとはいえ、勤務時間を増やしてくれた家内には頭が上がらないぞ。まあ、もともと上がっていない気もするが。
