前回焼いたナンの評判がよかったのは嬉しかったのだが、やはり工程を考えると焼くのが億劫になるのは否定できない。

一番厄介なのが「捏ね」の作業だ。生地にくっついたニトリル手袋がずるずると外れてくるのには閉口した。発酵は電子レンジ任せでいいのだが、あれをやって、これをやってと頭の中でシミュレーションすると、どうしても面倒くささが勝ってしまう。
そこで閃いた。長年、封印したままの「ホームベーカリー」を使えばいいのではないだろうか。焼き出す前までの、面倒なプロセスだけを任せればいいのだ。早速調べてみると、それにうってつけの「生地」だけを作るモードがあるらしい。捏ねと一次発酵という手間のかかる作業を自動でやってくれるモードだ。これなら、こちらがやるべき作業は「材料の計量」と「成形」そして「焼成」だけになる。
さっそく食品庫の奥にしまい込んだホームベーカリーを引っ張り出してきた。コンセントを挿してスイッチを押してみる。
――グォン。
捏ねるためのプロペラが回る。よし、ちゃんと動くぞ。2009年製のホームベーカリー。実に17年ぶりの目覚めである。隅々まできれいに掃除して、準備OKだ。
「よし、今日はカレーにしよう」
「え、ナン焼いてくれるの?」
「もちろん」
材料をきっちり測ってパンケースに投入し、生地モードを選択してスタート。
グォングォンと、懐かしい音が鳴り響き、捏ね工程が始まる。
それから1時間余りが経った頃、ピピピッと電子音がお知らせ。
蓋を開けると、ふっくらと発酵した生地がちゃんと出来上がっていた。
これを取り出して2つに切り、畳んで丸めて伸ばしてグリルトレーに載せて予熱しておいた魚焼きグリルにIN。こうやって書くととても簡単そうに見えるが、実際に簡単なのだ。それでも焼き上がりの見た目は、もうばっちり「ナン」。

家族の評判は上々。だが、お世辞抜きの自己評価としては、やっぱりお店で食べるナンに比べると数段落ちる。ナンと言うのもおこがましいかもしれない。でも、最大のハードルだった「捏ねと発酵」の手間がゼロになり、焼くこと自体は全く苦ではなくなった。これからはいろいろ工夫しながらレベルアップしていくぞ
料理をする工程そのものを大事にしたり、楽しんだりする人たちが聞いたら、眉を顰めるかもしれない。でも、少しでも楽をして、自分が無理をしない範囲で美味しいものを目指す、そんな料理との付き合い方も悪くないと思う。
何より、家族からの「また食べたい」というリクエストに、いつでもふたつ返事で応えてやれるのは嬉しいものだ。
